電動アクチュエーターエレシリンダーの3点位置決めとは
株式会社アイエイアイの電動アクチュエーター「エレシリンダー」とは何かをわかりやすく解説

エレシリンダーを導入するメリット
エレシリンダーは、株式会社アイエイアイが開発した電動アクチュエーターで、空気圧シリンダーの置き換えを狙った使いやすさと高精度制御を両立した製品群です。
内部にモータやボールねじ、エンコーダなどを一体化し、省配線・省スペースで「押す・引く・位置決め」を行えることが特徴です。
特に、前進端・後退端だけでなく中間位置も電気的に制御できる点が、従来のエアシリンダーにない大きな違いです。
電動シリンダーとしての基本構造と動作原理
エレシリンダーは、モータの回転運動をボールねじなどのねじ機構で直線運動に変換し、ロッドやスライダを前後に動かす構造を持ちます。
エンコーダで位置を検出しながら、コントローラがモータをフィードバック制御することで、一定の位置や速度を高精度に制御できます。
空気圧と異なり、圧力変動や負荷変動の影響を受けにくく、ミクロンオーダーでの位置制御や安定した繰り返し精度を実現しやすい点も、電動アクチュエーターならではの特徴です。
エアシリンダーとの違いと置き換えメリットの概要
エレシリンダーは、配管とコンプレッサを前提とするエアシリンダーと比較して、電源と信号線のみで駆動できるため、設備構成がシンプルになります。
また、位置、AVD(速度・加速度・減速度)を柔軟に変更できるため、段取り替えや機種切り替えに強く、生産ラインの多品種少量化にも対応しやすくなります。
さらに、エネルギー効率が高く、長期的にはコスト削減やCO₂排出削減にもつながるため、環境負荷低減の観点でも導入メリットが大きいのが特長です。
エレシリンダーの主な特長を整理
エレシリンダーの特長は多岐にわたりますが、導入検討時に押さえておきたいポイントを整理すると、以下のようになります。
空圧からの置き換えを考える際も、これらの特長を踏まえて「何を改善したいのか」を明確にすると、機種選定や仕様決めがスムーズになります。
- 空気圧シリンダー感覚で扱えるシンプル操作と標準化されたインターフェース。
- 位置、AVD(加速度・速度・減速度)をプログラムレスで設定が可能。
- 3点位置決め仕様(-MF)などのオプションで機械設計の自由度が向上。
- 省エネ・配管レスにより、ランニングコストと保守負担を低減。
- 豊富なストローク、多彩なラインアップで幅広い用途をカバー。
3点位置決め標準オプション「-MF」の概要と使いどころ
新たに標準オプション化された「3点位置決め仕様(-MF)」を選択することで、エレシリンダーは前進端・後退端に加え、中間位置での停止が可能になります。
これにより、1本のアクチュエーターで3ポジションの切り替えが実現し、ストッパや機械カムなどの機構部品を削減しつつ、複数ステップの動作をシンプルに構成できます。
用途としては、ワークの受け渡し高さの切り替えや、押し当て位置の2段階制御など、コンパクトな設備で多機能を求められる現場に適しています。
3点位置決め(-MF)オプションによる設備設計上の利点
3点位置決め仕様(-MF)を選択すると、1軸で3つの固定位置を切り替えられるため、これまで2本以上のシリンダーや複雑なカム機構で実現していた動作を、シンプルな構造で置き換えることができます。
結果として、部品点数やセンサ数の削減によるコストダウン、調整箇所の削減、レイアウト自由度の向上が見込めます。
特に、省スペース化が求められる治具内の押し当てやクランプ動作などで、大きなメリットを発揮します。
導入メリットの比較整理
アイエイアイのエレシリンダー導入時に期待できるメリットを、従来のエアシリンダー運用と比較しながら表に整理します。
この整理により、「どの観点で投資対効果が得られそうか」を検討しやすくなります。
| 観点 | エアシリンダー | エレシリンダー(-MF対応含む) |
|---|---|---|
| 位置制御 | 基本は2位置。中間位置は機械ストッパ等が必要。 | 数値で位置指定可能。3点位置決めオプション(-MF)で標準3ポジション。 |
| 段取り替え | バルブ・ストッパ調整などで作業時間が長い。 | プログラムレスで設定変更が容易。短時間で切り替え可能。 |
| ランニングコスト | コンプレッサ電力とエア漏れ損失が発生。 | 消費電力が比較的低く、無駄なエネルギーが少ない。 |
| メンテナンス | 配管・シール類の点検、漏れ対策が必須。 | 摺動部にシール材を使用していない為、消耗部品なし。 |
| 設備設計 | 多点位置は多軸・機械カムが必要になりがち。 | 1軸多機能化で省スペース・部品点数削減が可能。 |
エレシリンダーの主なラインアップと仕様の比較
エレシリンダーには、ロッドタイプ、スライダータイプ、テーブルタイプ、グリッパータイプなど、多様なバリエーションが存在し、用途に応じて最適な機種を選定できます。
それぞれ、ストローク、最大可搬重量、最高速度などが異なり、3点位置決め(-MF)オプションの適用可否も機種によって変わるため、仕様比較が重要です。
代表的なエレシリンダー形状(ロッド/スライダなど)の違い
ロッドタイプは「押す・引く」「クランプする」といった直線的な押し当て動作に適しており、エアシリンダーからの置き換え用途でよく使用されます。
一方、スライダタイプはテーブル状のスライダにワークや治具を直接取り付けられるため、搬送や位置決めステージ用途に多く用いられます。
取り付け自由度や剛性、許容モーメントなども形状によって異なるため、機構設計と合わせて選定することが重要です。
主な仕様比較の観点とラインアップ整理
エレシリンダーの機種選定では、ストローク、最大可搬重量、最高速度、繰り返し位置決め精度、使用環境など、多角的に比較する必要があります。
また、3点位置決めオプション(-MF)の選択可否も機種ごとに異なります。
以下に、代表的な比較観点を表形式で整理します。
| 比較観点 | ロッドタイプ例 | スライダタイプ例 |
|---|---|---|
| 主な用途 | 押し当て、クランプ、昇降 | 搬送、位置決め、ピック&プレース |
| 最大ストローク | 短〜中ストロークが中心 | 中〜長ストローク対応が多い |
| 推力レンジ | 中〜高推力向きの機種が豊富 | 中推力中心で、モーメント許容重視 |
| 取り付け自由度 | ロッド端の接続形状で対応 | スライダ面に直接治具を固定 |
| 3点位置決め(-MF) | 対応型式でロッドストロークを3位置制御 | 対応型式でスライダ位置を3位置制御 |
3点位置決め仕様(-MF)対応機種を選ぶ際のポイント
3点位置決め仕様(-MF)対応機種を選ぶ際は、まず目的とする3位置の間隔と許容誤差、そしてワークの重量や必要な推力から、軸のサイズとストロークを確定します。
そのうえで、PLC側のI/O点数やプログラム構成を含めて確認することが重要です。
用途別に見たおすすめシリーズ例
用途ごとに適したエレシリンダーの代表的なシリーズをイメージしやすくするため、簡略的に分類例を示します。
実際の型式選定では、カタログ値だけでなく、安全率や取り付けスペースも踏まえて検討します。
- クランプ・押し当て用途:短ストロークロッドタイプで中〜高推力モデルを選定。
- ワーク搬送用途:スライダタイプで中ストローク、剛性重視の機種を選択。
- 高さ切り替え用途:3点位置決め(-MF)対応ロッドタイプで昇降軸を構成。
- 狭い場所での搬送用途:リニアガイド内蔵のラジアルシリンダーで外付ガイド不要。
- ロボットハンド用途:グリッパータイプをロボットのエンドエフェクタに。
仕様比較時に注意したい環境条件とオプション
ラインアップ比較の際には、駆動性能だけでなく、使用環境やオプション類にも注意が必要です。
たとえば、粉塵やクーラントが飛散する環境では、防塵・防滴仕様やカバー付きタイプを選ぶ必要があり、食品・医療用途では潤滑油や材質にも配慮が求められます。
また、コントローラの設置場所との距離など、配線面の条件も総合的に確認しておくと、設計後の手戻りを防ぎやすくなります。
エレシリンダー導入時に押さえるべき選定と設計のポイント
エレシリンダーを導入する際は、単に「同じストロークの置き換え」を考えるだけでなく、負荷条件、安全率、制御方式、3点位置決めなどのオプション活用まで含めて総合的に検討することが重要です。
ここでは、実務的な選定・設計の際に押さえておきたいポイントを整理します。
負荷条件(質量・推力・慣性)の把握と安全率の考え方
選定の第一歩は、エレシリンダーが動かすワークや治具の質量、必要な推力・押し当て力、加速度に影響する慣性モーメントなどの負荷条件を正確に把握することです。
これらの値に対して、メーカーが推奨する安全率を考慮し、余裕を持った機種を選定することで、寿命や信頼性を確保できます。
特に押し当て動作では、最大推力だけでなく、押し当て力制御やクッション機能の有無も含めて検討する必要があります。
3点位置決め(-MF)オプションを設計に組み込む際の注意点
3点位置決め仕様(-MF)を活用する際は、前進端・中間位置・後退端それぞれの位置における機械干渉がないかを十分に検証する必要があります。
PLC側の制御では、3つの位置を切り替えるための信号線やインターロック条件を整理し、誤動作防止のロジックを組み込んでおくことも重要です。
選定フローの整理とチェックポイント
エレシリンダー選定をスムーズに進めるための基本フローを、チェックポイントと合わせて整理しておくと便利です。
以下に、一般的な選定ステップを一覧化します。
| ステップ | 内容 | 主なチェックポイント |
|---|---|---|
| 1 | 用途と動作の整理 | 押す・搬送する・昇降など、目的と必要な停止位置数(3点など)を明確化。 |
| 2 | 負荷条件の算出 | 質量、推力、ストローク、サイクルタイムを算出し、安全率を設定。 |
| 3 | 形状タイプの選定 | ロッド・スライダ等から、取り付けと剛性を踏まえて選択。 |
| 4 | 詳細仕様の絞り込み | ストローク、最大推力、速度、環境条件、-MF対応の可否を確認。 |
| 5 | コントローラ・I/O設計 | 必要I/O点数、上位PLCを決定。 |
機械設計側で考慮すべき取り付けとガイド構造
エレシリンダーの性能を十分に引き出すためには、機械側の取り付け剛性と負荷の支持方法も重要になります。
特に、横荷重がかかる用途では、シリンダー単体で負荷を支えず、リニアガイドやスライドレールなどの外部ガイドと組み合わせることで、寿命と精度を維持しやすくなります。またラジアル荷重に強いラジアルシリンダーを選定するのも一考です。
また、メンテナンス性を考慮した配置や、ケーブルの曲げ半径・可動ケーブルの取り回しにも注意が必要です。
電気・制御設計上のポイントとインターフェース
制御側では、使用するPLCや上位コントローラとのインターフェースを早い段階で確定させることが、後工程のトラブル防止につながります。
I/O制御なのか、フィールドバス通信なのかにより、配線やプログラムが大きく変わります。(フィールドバス通信時は、別売ユニットが必要となります。)
3点位置決め(-MF)仕様の場合、3位置のタイミングチャートや位置決め完了信号の扱いを明確にし、安全回路との連携も含めて設計することが重要です。
まとめ|エアシリンダーからの置換にはエレシリンダーが最適
- オールインワン。
- 簡単設定・プログラムレス。
- 3点位置決め仕様あり。
- 長寿命。
- 省エネ。
- 安全。
